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―Hazardous Materials Officer's Licenses―

危険物取扱者資格試験につきまして

 危険物取扱者試験とは「一般財産法人 消防試験研究センター」が全国で実施している国家資格であり、試験に合格してその免状を取得することで第1類〜第6類まである危険物の品目の取扱いが許される国家資格試験です。危険物取扱者免状は、甲種・乙種・丙種と大きく3つに分類され、甲種はすべての危険物の取扱と立ち合いが可能、乙種は第1類〜第6類の中の取得した類に該当する危険物のみの扱い・立ち合いが可能、丙種は取得した類に該当する危険物の取扱のみが可能です。  ここでは危険物第1類〜第6類までの危険物の性質・特徴・貯蔵・取扱などを中心に危険物取扱の為の基礎知識を習得するドキュメントサイトとして書き進めていきたいと思います。不定期更新ですが宜しくお願い致します。

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T. Hazardous Materials 第1類 ※未制作
U. Hazardous Materials 第2類2-1-1. 第2類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い
2-1-2. 第2類の危険物に共通する消化方法
2-2-1. 第2類の危険物の品名・物質
2-3-1. 第2類に属する危険物の特性
 ≫ 硫化リン
 ≫ 赤リン
 ≫ 鉄粉
 ≫ 金属粉
 ≫ マグネシウム
 ≫ 引火性固体
2-3-2. 第2類に属する危険物の性質一覧
V. Hazardous Materials 第3類3-1-1. 第3類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い
3-1-2. 第3類の危険物に共通する消化方法
3-2-1. 第3類の危険物の品名・物質
3-3-1. 第3類に属する危険物の特性
 ≫ カリウム
 ≫ ナトリウム
 ≫ アルキルアルミニウム
 ≫ アルキルリチウム
 ≫ 黄リン
 ≫ アルカリ金属及びアルカリ土類金属
 ≫ 有機金属化合物
 ≫ 金属の水素化物
 ≫ 金属のリン化物
 ≫ 炭化物
 ≫ 塩素化ケイ素化合物
3-3-2. 第3類に属する危険物の性質一覧
W. Hazardous Materials 第4類 ※未制作
X. Hazardous Materials 第5類5-1-1. 第5類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い
5-1-2. 第5類の危険物に共通する消化方法
5-2-1. 第5類の危険物の品名・物質
5-3-1. 第5類に属する危険物の特性
 ≫ 有機過酸化物
 ≫ 硝酸エステル類
 ≫ ニトロ化合物
 ≫ ニトロソ化合物
 ≫ アゾ化合物
 ≫ ジアゾ化合物
 ≫ ヒドラジンの誘導体
 ≫ ヒドロキシルアミン
 ≫ ヒドロキシルアミン塩類
 ≫ 金属のアジ化物
 ≫ 硝酸グアニジン
5-3-2. 第5類に属する危険物の性質一覧
Y. Hazardous Materials 第6類6-1-1. 第6類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い・消化方法
6-2-1. 第6類の危険物の品名・物質・性状・貯蔵/取扱い
6-3-1. 第6類に属する危険物の特性
 ≫ 過塩素酸
 ≫ 過酸化水素
 ≫ 硝酸

2-1-1.第2類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い

 ここでは可燃性の固体の性質を持つ第二類の危険物について説明していきます。第二類の危険物とは消防法別表第一の第二類の品名にあげられている可燃性固体の性状を有する物品を指します。可燃性固体とは固体であって火炎による着火の危険性を判断するためのガス着火試験において引火性を示すものを呼びます。第二類の危険物の主な特徴として、水に溶けない固体、水や熱水と反応して可燃性のガスを発生するものがある、燃焼によって有毒ガスを発生するものがある、酸化剤と接触・混合すると爆発するものがあるといった特徴があります。貯蔵ポイントとしては静電気対策が必須、粉塵爆発対策として電気設備は防爆構造で貯蔵します。
表1. 第2類危険物に共通する性質
危険物の性質
≫可燃性の固体である
≫比重が1より大きい
≫水に溶けない固体である
≫還元性物質で、酸化されやすく燃えやすい、酸化剤と接触・混合すると爆発する物質
≫燃焼することで誘導ガスを発生する物質がある
≫空気中の湿気により自然発火する物質がある
≫粉状のものは粉塵爆発をおこす危険性が高い
表2. 第2類危険物に共通する貯蔵取扱
危険物の貯蔵取扱
≫酸化剤との接触、混合を避ける
≫加熱、炎、高温体、衝撃、摩擦を避けて貯蔵する
≫容器は密栓して冷暗所に貯蔵する
≫水、または酸との接触を避ける
≫引火性固体はみだりに蒸気を発生させないように貯蔵する
 第2類危険物の共通性状の暗記のポイントとしては、可燃性の固体の性状を持ち還元性物質で酸化されやすく燃えやすい、そして燃焼すると有毒ガスを発生すること、酸化剤と接触することで爆発する物質であり粉状のものは粉塵爆発を起こしやすい物質であることがポイントです。貯蔵ポイントとして酸化剤との接触は厳禁であり、粉塵には粉塵爆発を起こさない為に静電気対策が必要であることを覚えておきましょう。

2-1-2. 第2類の危険物に共通する消化方法

  第2類の危険物はその危険物の性状から酸化剤との接触が厳禁であり、危険物の区分によって消化方法が異なります。硫化リンの火災には乾燥砂・リン酸塩類等の窒息消化方法が効果的ですが水・強化液・泡などの水系消化剤は使用できません。しかし黄リン・硫黄の火災においては乾燥砂・リン酸塩類等に加え水系消化剤が効果的です。  また鉄粉・金属粉・マグネシウムにおいては、乾燥砂等・炭酸水素塩類等の粉末消化剤が効果的ですが、水系・二酸化炭素・ハロゲン化物の消化剤は使用できません。  引火性固体においては乾燥砂等・泡・二酸化炭素・ハロゲン化物・粉末消化剤等を用いて消化を行います。

一般的な消化方法

 第二類の危険物では共通して乾燥砂等(乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩)を用いて可燃物を覆う窒息消化方法が効果的です。鉄粉・金属粉・マグネシウムは燃焼時に二酸化炭素・ハロゲン化物と反応するため二酸化炭素消化剤・ハロゲン化物消化剤は使用できません。

2-2-1. 第2類の危険物の品名・物質

 ここでは危険物第二類の品名・物質を一覧にしています。
危険物の品名危険物の物質化学式形状危険物の性状・危険性貯蔵・取扱
硫化リン三硫化四リン黄色の結晶・熱水と反応して分解し、有毒で可燃性の硫化水素を発生する。
・燃焼すると二酸化硫黄と有毒で腐食性のある十酸化四リンを生じる。
・摩擦熱や炎によって、発火の危険性がある、約100℃で自然発火する。
・酸化剤や金属粉との混合により、自然発火の危険性がある。
・高温体、加熱、炎との接触を避ける。
・火気、衝撃、摩擦を避ける。
・水分、酸化剤との接触、混合を避ける。
・金属粉との接触を避ける。
・容器は密栓して通風および換気のよい冷暗所に貯蔵する。
五硫化二リンP2S5淡黄色の結晶・水と反応して分解し、有毒で可燃性の硫化水素を発生する。
・燃焼すると、二酸化硫黄と十酸化四リンを生じる。
・酸化剤や金属粉との混合により、自然発火の危険性がある。
・高温体、加熱、炎との接触を避ける。
・火気、衝撃、摩擦を避ける。
・水分、酸化剤との接触、混合を避ける。
・金属粉との接触を避ける。
・容器は密栓して通風および換気のよい冷暗所に貯蔵する。
七硫化四リンP4S7 淡黄色の結晶・水と反応して分解し、有毒で可燃性の硫化水素を発生する。
・燃焼すると、二酸化硫黄と十酸化四リンを生じる。
・酸化剤や金属粉との混合により自然発火の危険性がある。
・高温体、加熱、炎との接触を避ける。
・火気、衝撃、摩擦を避ける。
・水分、酸化剤との接触、混合を避ける。
・金属粉との接触を避ける。
・容器は密栓して通風および換気のよい冷暗所に貯蔵する。
赤リン赤リンP赤褐色の粉末・約260℃で発火して燃焼すると、有毒で腐食性のある十酸化四リンになる。
・黄リンを含んだ不良品は、自然発火の危険性がある。
・塩素酸塩(炭素酸カリウムなど)などの酸化剤と混合すると、摩擦、衝撃などにより発火の危険性がある。
・粉塵爆発の危険性がある。
・酸化剤との混合を避ける。塩素酸カリウムなどの塩素酸塩との混合は要注意。
・容器は密栓して冷暗所に貯蔵する。
硫黄硫黄S無味・無臭の黄色の固体・水にはとけないが、二硫化炭素にはとける。
・約360℃で発火して燃焼すると、燃焼すると有毒な二酸化硫黄を発生する。
・高温では多くの金属元素や非金属元素と反応する。
・電気の不良導体で静電気を蓄積しやすく、粉末状の硫黄は空気中に飛散すると粉塵爆発を起こすことがある。
・酸化剤と混合すると、加熱、衝撃、摩擦などにより発火する。
・硫黄は電気の不良導体で静電気を蓄積しやすく、粉末状の硫黄は空気中に飛散すると粉塵爆発を起こすことがあるため、粉末状の硫黄は二層以上のクラフト紙袋または麻袋に収納し、塊状の硫黄は麻袋やわら袋に収納する。
・火気、衝撃、摩擦を避け、静電気を蓄積させない貯蔵をする。
・酸化剤との接触、混合を避ける。
鉄粉、金属粉(アルミニウム粉・亜鉛粉)鉄粉Fe灰白色の金属結晶・両性元素で酸やアルカリと反応して水素を発生する。
・加熱、打撃、火との接触により発火の危険性があり、油分が染みた切削屑などは自然発火の危険性がある。
・空気中に飛散すると粉塵爆発の危険性がある。
・酸化剤と混合すると、加熱、衝撃により爆発の危険性がある。
・酸類との接触を避ける。
・2層以上のクラフト紙袋に貯蔵できる。
アルミニウム粉Al銀白色の粉末・塩酸・硫酸などの酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリと反応して反応して水素を発生する。
・空気中の水分やハロゲン元素と反応して自然発火の危険性がある。
・着火が容易で、すぐに激しく燃焼する。
・酸化剤と混合すると、加熱、衝撃などにより発火の危険性がある。
・空気中に飛散すると、粉塵爆発の危険性がある。
・水分およびハロゲン元素との接触を避ける。
・酸化剤との混合を避ける。
・酸、アルカリとの接触を避ける。
亜鉛粉Zn灰青色の粉末・高温の水蒸気と反応して水素を発生する。
・塩酸・硫酸などの酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリと反応して反応して水素を発生する。
・空気中の水分やハロゲン元素と反応して自然発火の危険性がある。
・着火が容易で、すぐに激しく燃焼する。
・酸化剤と混合すると、加熱、衝撃などにより発火の危険性がある。
・空気中に飛散すると、粉塵爆発の危険性がある。
・貯蔵・取扱はアルミニウム粉(Al)と同様。
・水分およびハロゲン化物との接触を避ける。
・酸化剤との混合を避ける。
・酸、アルカリとの接触を避ける。
マグネシウムマグネシウムMg銀白色の金属結晶・熱水や希酸に溶けて、水素を発生する。
・白光を放って激しく燃焼し酸化マグネシウムになる。
・空気中の湿気を吸収して発熱し、自然発火する。粉末やフレーク状のものは、表面積が大きくなるため、更に発火の危険性が高くなる。
・ハロゲン化物と反応する。
・高温では窒素とも反応する。
・酸化剤と混合すると衝撃などで発火する危険性がある。
・自然発火の危険性があるため水分や酸との接触を避ける。
・ハロゲン化物との接触を避ける。
引火性固体固形アルコール乳白色のゲル状物質・エタノールまたはエタノールを凝固剤で固めた混合物であり、携帯用の固形燃料に用いられる。
・40℃未満の常温(20℃)でも可燃性蒸気を発生する。
・炎、火花との接触、接近を避ける。
・容器は密栓して換気のよい冷暗所に貯蔵する。
ゴムのりのり状の固体・常温(20℃)以下(引火点が10℃以下)で可燃性蒸気を発生する。
・蒸気を吸入すると、頭痛やめまい、貧血を起こすことがある。
・基本的な貯蔵・取扱は固形アルコールと同様。
・直射日光を避ける。
ラッカーパテペースト状の固体・常温(20℃)以下で可燃性蒸気を発生する。
・燃えやすい個体で、蒸気が滞留すると爆発することがある。
・蒸気を吸入すると有機溶剤中毒を起こす。
・直射日光を避ける。
・蒸気を滞留させない。
・その他は固形アルコールと同じ。

2-3-1. 第2類に属する危険物の特性

硫化リン

 硫化リンはリン(P)と硫黄(S)の化合物(硫化物)です。硫化リンに属する主な危険物にはリンと硫黄の組成比により別の物質となり三硫化四リン・五硫化二リン・七硫化四リンがあり、融点は硫黄よりも高く三硫化四リン<五硫化二リン<七硫化四リンの順に高くなります。共通して酸化剤・金属粉と混合すると自然発火することがあり、燃焼すると有毒な二酸化硫黄(亜硫酸ガス)と有毒で腐食性のある十酸化四リンを発生します。

赤リン

 赤リンは、黄リン(P)を窒素中で250℃で数時間熟して生成される黄リンの同素体で、形状は無臭・無毒の赤褐色の粉末です。特徴として水や二硫化炭素などの有機溶剤にも溶けない物質です。約260℃で発火して燃焼すると、有毒で腐食性の十酸化四リン(五酸化ニリン)を発生します。純粋な赤リンは黄リンに比べて安定しており、空気中に放置しても自然発火はしませんが、黄リンを含んだ不良品は自然発火することがあります。

鉄粉

 鉄粉は灰白色の金属結晶で、水やアルカリにはとけませんが、酸には溶けて水素を発生することが特徴です。粉状のものは空気中に飛散すると粉塵爆発の危険性があり、油分がしみこんだものは自然発火することがあります。鉄自体は良導体ですが、鉄粉になると表面積が大きくなり熱伝導率が小さくなるため、鉄塊と異なり加熱などにより発火の恐れがある物質です。

金属粉

 金属粉はアルカリ金属およびアルカリ土類金属、鉄、マグネシウム以外の金属の粉を指します。金属粉も鉄粉と同様、金属塊は良導体であり熱を蓄積しにくい物質ですが、粉状にすることで鉄粉と同じ理由で容易に火災の恐れがある物質です。また、金属粉は酸、アルカリ、熱水などと反応して水素を発生します。金属粉に属する主な危険物にはアルミニウム粉、亜鉛粉があります。

マグネシウム

 マグネシウムは消防法上塊のものは危険物から除外されており、危険物の指定がある物質は粉末状のものが危険物指定がされています。マグネシウムは銀白色の軽金属で熱水や希酸に溶けて水素を発生し白光を放って激しく燃焼して酸化マグネシウム(MgO)になります。

引火性固体

 引火性固体は固形アルコールその他1気圧において引火点が40℃未満のもので、メタノールまたはエタノールを凝固剤で固めた混合物の物質です。主な引火性固体に属する危険物には、固形アルコール、ゴムのり、ラッカーパテがあります。引火性固体では蒸発した可燃性蒸気に引火して燃焼します。

2-3-2. 第5類に属する危険物の性質一覧

 ここでは第2類に属する危険物の性質を簡単な一覧表にしてまとめました。第2類の危険物は酸化性の固体の特徴から引火性固体の一部を除いて比重は1より大きいものばかりです。引火性固体などは引火点をもつ為しっかりと押さえ、その危険物ごとに分けて覚えていくと覚えやすいのかもしれません。
品名危険物比重融点(℃)引火点(℃)発火点(℃)沸点(℃)その他の性質
硫化リン三硫化四リン2.03172.5℃ - 100℃407℃・水に溶けないが、二硫化炭素、ベンゼンには溶ける。
五硫化二リン2.09290.2℃ - 290℃514℃・二硫化炭素に溶ける。
七硫化四リン2.19310℃ -  - 523℃・二硫化炭素に溶ける。
赤リン赤リン2.1〜2.3 - - 260℃ - ・無臭・無毒で赤褐色の粉末。
・黄リンに比べて安定している。
硫黄硫黄約2115℃ - - 445℃・無味無臭の物質で水には溶けないが、二硫化炭素に溶ける。
鉄粉鉄粉7.91535℃ - - 2750℃・水・アルカリに溶けないが酸に溶けて水素を発生する。
金属粉アルミニウム粉2.7660℃ - - 2500℃・水に溶けない
・燃焼すると酸化アルミニウムを発生する。
金属粉亜鉛粉7.1419.5℃ - - 907℃・高温に熱すると白光を放って燃焼する。
・燃焼すると酸化亜鉛を発生する。
マグネシウムマグネシウム1.7650℃ - - 1105℃・銀白色の軽金属で、熱水や希酸に溶けて水素を発生する。
引火性固体固形アルコール0.8 - 40℃未満 - - ・メタノール・エタノールを凝固剤で固めた混合物
・固形燃料として用いられる。
ゴムのり - - 40℃未満 - - ・常温(20℃)でも可燃性蒸気を発生する。
・生ゴムをベンジン、ベンゼンなどの溶剤で溶かして作られる接着剤。
ラッカーパテ1.40 - 約10℃約480℃ - ・ニトロセルロース、トルエンなどから作られるペースト状の固体。
・ラッカー系の下地修正塗料に用いられる。

3-1-1.第3類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い

 ここでは第三類の危険物について説明を進めていきます。第三類の危険物とは、消防法の危険物第三類で定義されている物質で自然発火性及び禁水性の固体又は液体を呼びます。自然発火性物質・禁水性の物質とは自然発火試験、又は水との反応試験において一定の性状を示すものを呼びます。第三類の物質の共通する特徴としてほとんどの第三類の物質が自然発火性と禁水性の両方の性状を示しますが、黄リンは自然発火性のみ・リチウムは禁水性のみの性状を示します。尚、禁水性の物質は水と反応して可燃性ガスを発生することが特徴です。貯蔵のポイントとして、禁水性物質は水との接触を避けて、自然発火性は空気との接触をさけて貯蔵します。消化ポイントとしては第三類に有効な消化方法は乾燥砂で覆うことが適当です。
表1. 第3類危険物に共通する性質
危険物の性質
≫空気や水と接触すると、発火の危険性がある
≫禁水性物質は空気中の水分と反応して自然発火することがある。
≫多くは可燃性の固体または液体であるが、不燃性のものがある。
≫ほとんどの第三類の物質が、自然発火性及び禁水性の両方を有している。
≫黄リンは自然発火性のみ有し、リチウムは禁水性のみを有している。
≫禁水性物質は、水と反応して発熱し、可燃性ガスを発生する。
≫多くは還元性を有し、酸化剤と接触、混合すると発火の危険性がある。
表3. 第3類危険物に共通する貯蔵取扱
危険物の貯蔵取扱
≫禁水性物質は水との接触を避けて貯蔵する。
≫自然発火性物質は空気や炎、火花、高温体との接触や加熱を避けて貯蔵する。
≫還元性を有するものは、酸化剤との混合、接触を避けて貯蔵する。
≫容器は密封して冷暗所に貯蔵する。
≫第三類の物質には空気や水と接触しなよう保護液中に保存する物質がある。
≫窒素などの不活性ガスを封入して保存するものがある。
≫黄リンと禁水性物質は同一の場所に貯蔵しない。
 第3類危険物の共通性状の暗記のポイントとしては、一部を除いて第三類のほとんどの物質が自然発火性・禁水性を両方の性質をもっていること、禁水性物質は水と反応して発熱して可燃性ガスを発生すること、多くは可燃性の固体・液体であるが、不燃性の物質があることがポイントです。また貯蔵については禁水性物質は水との接触を避けて、自然反応性物質は空気との接触をさけて貯蔵します。また第三類の一部の物質は保護液中に貯蔵して保存、窒素などの不活性ガスを封入して保存する貯蔵がありますので物質により貯蔵の仕方が異なることに注意して取り扱います。

3-1-2. 第3類の危険物に共通する消化方法

第三類の物質の全てに有効な消化剤は乾燥砂等(乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩で覆うことが有効な消化方法です。

禁水性物の消化方法

 その他、禁水性物質には水、強化液、泡などの水系消火剤、リン酸塩類等の粉末消化剤は使用できないこと、二酸化炭素やハロゲン化物と反応するものが多く、二酸化炭素消化剤、ハロゲン化物消化剤は使用できないことがポイントです。

黄リンの消化方法

 黄リンは自然発火性物質であるため、水、強化液、泡などの水系消化剤を用いることができますが、棒状・高圧注水は飛散することが考えられるため使用は避ける必要があります。他の第三類の物質と同様に二酸化炭素やハロゲン化物と反応するものが多く、二酸化炭素消化剤、ハロゲン化物消化剤は使用できないことがポイントです。

3-2-1. 第3類の危険物の品名・物質

 ここでは危険物第三類の品名・物質を一覧にしています。
危険物の品名危険物の物質化学式形状危険物の性状・危険性貯蔵・取扱
カリウムカリウム銀白色のやわらかい金属・銀白色の金属物質であるが比重は1より小さい。
・強い還元性を有し、酸化されやすい物質である
・水と激しく反応して水素を発生する、空気中の水分やアルコールと反応して水素を発生する。
・加熱すると紫色の炎を出して燃焼する。
・腐食性があり触れると皮膚をおかす。
・水または空気との接触を避け、乾燥した場所に貯蔵する。
・ハロゲン元素、酸類との接触を避ける。
・貯蔵する場所の床面を地盤より高くする。
・灯油などの保護液中に小分けして貯蔵し、保護液の量に注意する。
・皮膚に触れないように注意する
ナトリウムNa銀白色のやわらかい金属・水と激しく反応して発熱し、水素を発生して発火、爆発の危険性がある。
・長時間空気に触れると自然発火の危険性がある。
・ハロゲン元素と激しく反応して発火する。
・腐食性があり、触れると皮膚を侵す
・水または空気との接触を避け、乾燥した場所に貯蔵する。
・ハロゲン元素、酸類との接触を避ける。
・貯蔵する場所の床面を地盤より高くする。
・灯油などの保護液中に小分けして貯蔵し、保護液の量に注意する
アルキルアルミニウムトリエチルアルミニウム(C2H5)3Al無色の液体・空気に触れると酸化反応を起こし、白煙を生じて自然発火する。
・水やアルコールと激しく反応して可燃性のエタンを発生する。
・発火すると、物質自体が飛散する。
・二酸化炭素、ハロゲン化物と激しく反応する。
・燃焼時に発生する白煙を多量に吸入すると灰や気管に支障がおこる。
・皮膚に触れるとやけどする
・窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵し、空気や水と絶対に接触させない。
・ハロゲン元素、酸化剤、火気、高温体との接触を避ける。
・容器は耐圧性のあるものを使い、破損防止のため安全弁をつける
ジエチルアルミニウムクロライド(C2H5)2AlCl無色の液体※トリエチルアルミニウムと同様※トリエチルアルミニウムと同様
エチルアルミニウムクロライドC2H5AlCl2無色の液体※トリエチルアルミニウムと同様※トリエチルアルミニウムと同様
エチルアルミニウムジクロライドC2H5AlCl2無色の液体※トリエチルアルミニウムと同様※トリエチルアルミニウムと同様
エチルアルミニウムセスキクロライド(C2H5)3Al2Cl3無色の液体※トリエチルアルミニウムと同様※トリエチルアルミニウムと同様
アルキルリチウムノルマルブチルリチウムC4H9Li黄褐色の液体・空気に触れると酸化反応を起こし、白煙を生じて自然発火する。
・水、アルコール類、アミン類などと激しく反応して可燃性のブタンを発生する。
・その他の危険性は、アルキルアルミニウムと同様。
・窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵して空気や水と絶対に接触させない。
・その他はアルキルアルミニウムと同じ
黄リン黄リンP白色または淡黄色のロウ状の固体・空気中に放置すると徐々に酸化され白煙を生じて自然発火し、有毒で腐食性のある十酸化四リンになる。
・強アルカリ溶液と反応してリン化水素を生じる。
・光にあたると赤リンに変化し暗色になる。
・酸化剤、ハロゲン元素、硫黄と激しく反応して発火、爆発の危険性がある。
・ハロゲン化物と反応して有毒ガスを発生する。
・皮膚に触れるとやけどの危険性がある。
・猛毒性を有し、内服により数時間で死亡する。
・水中で貯蔵し、空気と絶対に接触させない貯蔵をする。
・直射日光を避け、冷暗所に貯蔵する。
・火気、高温体、酸化剤、ハロゲン元素を近づけない。
・保護具を着用して扱う
アルカリ金属リチウムLi銀白色の金属結晶・水とは常温(20℃)で徐々に、高温では激しく反応して水素を発生する。
・塊状の場合は融点以上の加熱により発火するが、粉末状の場合は常温(20℃)でも発火する
・水分との接触を避ける。
・酸、ハロゲン元素との接触を避ける。
アルカリ土類金属カルシウムCa銀白色の金属結晶・水とは、常温(20℃)では徐々に高温では激しく反応して水素を発生し、水酸化カルシウム(消石灰)を生成する。・水分およびハロゲン元素との接触を避ける。
・酸化剤との混合を避ける。
・酸、アルカリとの接触を避ける。
バリウムBa銀白色の金属結晶・水とは激しく反応して水素を発生し水酸化バリウムを生成する。
・常温でハロゲン元素と反応してハロゲン化バリウムを生成する。
・水分との接触を避ける。
・水分との接触を避ける。
・酸、ハロゲン元素との接触を避ける。
有機金属化合物ジエチル亜鉛ZN(C2H5)2無色の液体・空気中で容易に酸化され自然発火する。
・水、アルコール、酸と反応して可燃性のエタンを発生する。
・ハロゲン化物と激しく反応して有毒ガスを発生する。
・自然発火の危険性があるため水分や酸との接触を避ける。
・ハロゲン化物との接触を避ける。
金属の水素化物水素化ナトリウムNaH灰色の結晶・水と激しく反応して発熱し水素を発生して自然発火の危険性がある。
・二酸化炭素やハロゲン元素とも反応する。
・酸化剤との混合、接触により発熱して発火の危険性がある。
・高温面や炎に触れると分解や酸化により有毒なアルカリ性の煙を生成する。
・酸化剤、水分、ハロゲン元素との接触をさける。
・窒素などの不活性ガスを封入、または鉱物油中で貯蔵し、空気や水とは接触させない。
金属のリン化物リン化カルシウムCa3P2暗赤色の固体または結晶性粉末・水や弱酸と反応して分解し、有毒で可燃性のリン化水素を発生する。
・燃焼することで有毒で腐食性のある十酸化四リンを発生する。
・強酸化剤と激しく反応し、火災や爆発の危険性がある。
・水分、酸、強酸化剤と接触させない。
・容器は密封して冷暗所に貯蔵する
カルシウムまたはアルミニウムの炭化物炭化カルシウムCaC2・水とは常温(20℃)で反応して発熱し、可燃性のメタンを発生して水酸化アルミニウムになる・水分、湿気を避け、乾燥した場所に貯蔵する。
・水分、湿気を避け、乾燥した場所に貯蔵する。
・必要に応じて、窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵する。
・金属製のドラムに貯蔵できる。
塩素化ケイ素化合物トリクロロシランSiHCl3無色または白色の結晶・水と反応して発熱し、可燃性のアセチレンを発生して水酸化カルシウム(消石灰)になる。
・アセチレンは燃焼範囲が広く、銅、銀、水銀と爆発性物質(アセチリド)をつくる。
・高温で窒素と反応すると石灰窒素を生成する。
・水分、湿気を避け、乾燥した場所に貯蔵する。
・窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵する。

3-3-1. 第3類に属する危険物の特性

カリウム

 カリウムはアルカリ金属に属し、銀白色のやわらかい金属で金属でありながら比重は1より小さい物質です。強い還元性を有し、きわめて酸化されやすく常温(20℃)でも空気中で酸化されます。また水と激しく反応して発熱して水素を発生します。融点以上に加熱すると紫色の炎を出して燃焼することが特徴です。貯蔵にあたっては、水分や空気と接触しないよう乾燥した場所で灯油などの保護液中に小分けして貯蔵します。金属材料を腐食するので容器の破損や腐食に注意して冷暗所に貯蔵します。

ナトリウム

ナトリウムはアルカリ金属に属し、銀白色のやわらかい金属で比重は1より小さい物質です。カリウムと同様に強い還元性を有し、きわめて酸化されやすく常温でも酸化されます。アルコール・水と反応して発熱し、水素を発生します。カリウムとナトリウムの大きな違いとして、融点以上に加熱すると黄色の炎を出して燃焼することが特徴的です。貯蔵にあたってはカリウムと同様に乾燥した場所で灯油などの保護液中に小分けして貯蔵します。

アルキルアルミニウム

 アルキルアルミニウムは有機金属化合物ののひとつでアルキル基がアルミニウム原子に結合した化合物のことを呼びます。アルキルアルミニウムに属する危険物は、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドがあります。アルキルアルミニウムの特徴として空気に触れると酸化して自然発火します。そして水やアルコールと激しく反応してエタンを発生して発火して飛散することがあります。貯蔵は窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵します。

アルキルリチウム

 アルキルリチウムはアルキル基とリチウム原子が結合した化合物です。アルキルリチウムに属する主な危険物にはノルマルブチルリチウムがあります。ノルマルブチルリチウムは黄褐色の液体で比重は1より小さく、水・アルコール類・アミン類などと反応して可燃性のブタンを発生します。空気に触れると酸化して自然発火することがある物質です。貯蔵にあたっては窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵し、空気や水と絶対に接触させない方法で貯蔵を行います。

黄リン

黄リンは赤リンやリン化合物の原料として使用される物質で、第三類の中で自然発火性のみを有する物質でニラに似た不快臭があることが特徴です。黄リンは非常に酸化されやすく空気に触れると酸化熱により燃焼して有毒腐食性のある十酸化四リンを生じます。その他、濃硝酸と反応してリン酸を生成する、アルカリ溶液と反応して有毒で悪臭のある可燃性ガスのリン化水素(ホスフィン)を生成します。貯蔵にあたっては絶対に空気に触れないように水中で貯蔵し、禁水性物質とは同一の場所に貯蔵しないように場所を選びます。

アルカリ金属及びアルカリ土類金属

消防法でアルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する主な危険物としてはリチウム・カルシウム・バリウムがあり、どれも銀白色の金属結晶でいずれも水と反応して水素を発生することが特徴です。アルカリ土類金属のカルシウムとバリウムは水素中で加熱すると、カルシウムは水素化カルシウム、バリウムは水素化バリウムといった水素化物を生じます。貯蔵にあたっては水分・酸・ハロゲン元素との接触を避け密栓して貯蔵します。

有機金属化合物

 有機金属化合物とは炭素原子が金属原子と結合した化合物のことで、試薬、触媒などに使用される物質です。有機金属化合物にはジエチル亜鉛があります。ジエチル亜鉛は無色の液体で水より重く有機溶剤に溶けます。空気中で自然発火し、水と反応して可燃性のエタンを発生し、ハロゲン化物と激しく反応して有毒ガスを発生します。貯蔵にあたっては窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵し、空気や水と絶対に接触させない貯蔵をします。

金属の水素化物

金属の水素化物は水素と金属と結合した化合物で、消防法での金属の水素化物に属する物質として水素化ナトリウムや水素化リチウムがあります。金属の水素化物は強い還元性を有し、酸化剤と接触により発熱して発火の危険性があります。また空気中では水分と反応して発熱して水素を発生して自然発火の危険性があります。貯蔵にあたっては不活性ガスを封入して貯蔵して、空気や水とは接触させない貯蔵方法を行います。

金属のリン化物

金属のリン化物とはリンと金属元素からなる化合物のことです。金属のリン化物にはリン化カルシウムがあり、リン化カルシウムは暗赤色の固体で比重は1より大きく水より重い物質です。金属のリン化物は常温の空気中では安定しておりそれ自体は不燃性ですが、水や酸と反応してリン化水素を発生することが特徴です。又燃焼して有毒で腐食性のある十酸化四リンを発生します。貯蔵にあたっては水分、酸化剤との接触をさけ乾燥した場所に貯蔵します。

カルシウムまたはアルミニウム炭化物

炭化物とは炭素とカルシウム・アルミニウムなどの元素の化合物のことです。炭化物には炭化カルシウムや炭化アルミニウムがあり、純粋なものは無色・白色の結晶で比重は1より大きく水より重い物質です。炭化カルシウムは常温では安定していますが高温では窒素と反応して石灰窒素を生成、水と反応して発熱して可燃性のアセチレンを発生して水酸化カルシウムになります。炭化アルミニウムは水と反応して熱とメタンを発生して水酸化アルミニウムになります。貯蔵にあたっては水分、湿気を避けて乾燥した場所に貯蔵、必要に応じて窒素などの不活性ガスを封入して貯蔵します。

塩素化ケイ素化合物

塩素化ケイ素化合物はケイ素が塩素化した化合物のことをよびます。塩素化ケイ素化合物に属する危険物にはトリクロロシランがあります。トリクロロシランは無色の流動性液体で引火性を有する液体ですが、引火点が常温より低いこと、火災が発生した場合燃焼範囲が広く、引火の危険性が非常に高い物質です。また発火すると毒性、腐食性のある煙(ヒューム)を放出します。トリクロロシランは水に溶けて金属を腐食させる塩化水素を発生することも特徴です。貯蔵にあたっては水分・酸化剤を接触させず容器を密栓して貯蔵します。

3-3-2. 第3類に属する危険物の性質一覧

 ここでは第3類に属する危険物の性質を簡単な一覧表にしてまとめました。
品名危険物比重融点(℃)引火点(℃)発火点(℃)沸点(℃)その他の性質
カリウムカリウム0.964℃ -  - 774℃・強い還元性を有し、酸化されやすい物質。
ナトリウムナトリウム0.9798℃ - - 883℃・カリウムと同様で強い還元性を有し、酸化されやすい物質。
アルキルアルミニウムトリエチルアルミニウム0.83-46℃ - - 187℃・空気に触れると酸化藩王を起こし自然発火する。
ジエチルアルミニウムクロライド0.97-74℃ -  - 214℃・トリエチルアルミニウムとほぼ同様の性質
エチルアルミニウムジクロライド1.2332℃ -  - 194℃・トリエチルアルミニウムとほぼ同様の性質
エチルアルミニウムセスキクロライド1.10-21℃ -  - 212℃・トリエチルアルミニウムとほぼ同様の性質
アルキルリチウムノルマルブチルリチウム0.84-53℃ -  - 194℃・空気に触れると酸化反応を起こして自然発火する。
黄リン黄リン1.844℃ -  - 281℃・ニラに似た不快臭がある。
・危険物第三類の中で自然発火性のみの性質を持つ。
アルカリ金属リチウム0.5180℃ -  - 1342℃・禁水性のみの性質を持つ。
アルカリ土類金属カルシウム1.60845℃ -  - 1494℃・空気中で熱するとオレンジ色の炎を出して燃え酸化カルシウムになる。
バリウム3.6727℃ -  - 1850℃・空気中で加熱すると黄緑色の炎を出して燃え酸化バリウムになる。
有機金属化合物ジエチル亜鉛1.21-30℃〜-28℃ -  - 118℃・ジエチルエーテル、ベンゼンなどの有機溶剤に溶ける。
金属の水素化物水素化ナトリウム1.4 -  -  - 800℃・常温では安定しているが、高温ではナトリウムと水素に分解する。
水素化リチウム0.82 -  -  - 600℃・常温では安定しているが、高温ではリチウムと水素に分解する。
金属のリン化物リン化カルシウム2.51 -  -  - 1600℃・それ自体では不燃性であるが、、水や酸と反応して分解しリン化水素を発生し発火することがある。
炭化物炭化カルシウム2.2 - - - 2300℃・常温では安定しておりそれ自体は不燃性。
炭化アルミニウム2.37 - - - 2200℃・常温では安定。
塩素化ケイ素化合物トリクロロシラン1.34 - -28〜-6℃ - 32℃・引火性を有し、常温で発火する危険性がある。

5-1-1. 第5類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い

 ここでは自己反応性の固体又は液体の危険物である第5類の危険物について説明していきます。第5類の危険物とは消防法別表第一の第5類の品名欄に掲げてある自己反応性を有する個体または液体を指し、自己反応性物質とは個体または液体であって、爆発の危険性を判断するための熱分析試験において一定の性状を示すもの、又は加熱分解の激しさを判断するための圧力容器試験において一定の性状を示すもの、又は加熱分解の激しさを判断するための圧力容器試験において一定の性状を示すものを呼びます。難しい表現にはなっていますが性状とはものの性質や状態のことを性状とよび、第5類では以下のような性状があります。 危険物第5類の性質で最も重要なことは自己燃焼性があること、危険物内部に酸素と可燃物を含有しており、燃焼に必要な3要素のうち、可燃物・酸素供給源・点火源のうち二つの要素を含んでおり、酸素供給源がなくても点火源があれば燃焼する ことを覚えておきましょう。
表1. 第5類危険物に共通する性質
危険物の性質
≫可燃性で自己反応性の個体または液体
≫有機化合物のものが多い
≫比重は1より大きい
≫分子内に酸素を含有し、自己燃焼性を有するものが多い
≫燃えやすく、燃焼速度が早い
≫加熱、衝撃、摩擦などにより、発火・爆発する
≫空気中に長時間放置すると分解し、自然発火するものがある
≫引火性を有するものがある
≫金属と反応して爆発性の金属塩を生成するものがある
表2. 第5類危険物に共通する貯蔵取扱
危険物の貯蔵取扱
≫加熱、衝撃、摩擦などを避ける
≫火気、高温体を近づけない
≫日光、紫外線を避ける
≫分解しやすいものは、特に室温、湿気、通風に注意する
≫一般に容器は密栓して、通風のよい冷暗所に貯蔵する
≫エチルメチルケトンパーオキサイドの貯蔵容器は、密栓せず、通気性を持たせる
≫貯蔵場所には必要最小限の量を置く
≫廃棄する場合は、小分けして、危険物の性質に応じた安全な方法で処理する
 第5類危険物の共通性状の暗記のポイントとしては、自己反応性の固体液体であり、酸素を含有し自己燃焼性を有するものが多いこと、加熱、衝撃、摩擦などにより発火・爆発するものがあること、空気中に放置すると分解して自然発火する物質があることを覚えておきましょう。

5-1-2. 第5類の危険物に共通する消化方法

  第5類の危険物はその危険物の性状からきわめて燃焼速度が速いことが特徴で、危険物の量が多い場合や燃え広がったときは消化が困難です。第5類の消化方法のポイントは大きく二つに別れており、一般的な方法で消化する危険物と金属のアジ化物(アジ化ナトリウム)で分かれており消化方法が異なります。

一般的な消化方法

大量の水を注水するかもしくは水、強化液、泡などの水系消火剤を用いて燃焼温度を分解温度以下に下げる冷却消化によって消化を行います。そのほか、乾燥砂等(乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩)を用いて可燃物を覆う窒息消化方法は比較的効果的です。しかし酸素を含有しているため、そのほかの窒息作用によって酸素を遮断する二酸化炭素消火剤、ハロゲン化物消火剤、粉末消火剤には効果がなく適応しない点は注意が必要です。

金属のアジ化物

乾燥砂等を用いて覆う窒息消化は効果的です。しかし一般的な消化と異なり水、強化液、泡などの水系消火剤は使用できません。また一般的な消化方法と同様に二酸化炭素消火剤、ハロゲン化物消火剤、粉末消火剤は使用できない点は注意が必要です。
共通する消化方法のポイントとして、乾燥砂等で覆う窒息消化が適当であり、二酸化炭素消火剤、ハロゲン化物消火剤、粉末消火剤 は使用できないことを覚えておきましょう。

5-2-1. 第5類の危険物の品名・物質

 ここでは第5類の危険物の品名・物質・性質を一覧にしてみました。品名はなるべく暗記して第5類の品名なのかわかるようにしておいた方がよいかと思います
危険物の品名危険物の物質化学式形状危険物の性状・危険性貯蔵・取扱
有機過酸化物過酸化ベンゾイル白色の粒状結晶・乾燥すると爆発の危険性がある。
・常温20℃では安定しているが加熱して100℃前後で白煙をだして分解する。
・水に溶けないが、ベンゼン・エーテルなどの有機溶剤に溶ける。
・濃硫酸、硝酸などの強酸やアミン類などと接触すると燃焼・爆発のおそれがある。
・有機物や強酸類との接触を避け、乾燥した状態では取り扱わない。
・加熱、摩擦、衝撃、火気、日光を避けて換気のよい冷暗所に貯蔵する。
エチルメチルケトンパーオキサイド無色透明で油状の液体・布や酸化鉄と接触すると分解する。
・直射日光。衝撃などで分解し発火する。
・特異臭がある。
・水には溶けないがジエチルエーテルなどの有機溶剤には溶ける。
・容器は密栓せず、蓋に通気性を持たせて貯蔵する。
・可塑剤で希釈して取り扱う。
過酢酸無色の液体・引火性を有し強い刺激臭がある。
・水、アルコール、ジエチルエーテル、硫酸によく溶ける。
・110℃まで加熱すると発火・爆発する。
・水で希釈して取り扱う。
・その他は過酸化ベンゾイルと貯蔵・取扱は同じ
硝酸エステル類硝酸メチル無色透明の液体・引火点は15℃で常温(20℃)より低く爆発しやすい。
・直射日光で分解し、発火の危険性がある。
・火気厳禁
・直射日光、加熱、摩擦、衝撃を避ける。
硝酸エチル無色透明の液体・引火点は10℃で引火性を有し爆発の危険性がある。
・直射日光で分解し、発火の危険性がある。
・火気厳禁
・直射日光、加熱、摩擦、衝撃を避ける。
ニトログリセリン無色の油状の液体
・有毒
・水にはほとんど溶けないが、有機溶剤にはよく溶ける。
・8℃で凍結して爆発の危険性がある。
・水酸化ナトリウムのアルコール溶液で分解すると非爆発性になる。
・加熱、衝撃、摩擦などを避ける。
・容器は密栓して換気のよい冷暗所に貯蔵する。
ニトロセルロース(硝化綿)無味無臭の固体・空気中に長時間放置すると分解して一酸化窒素(NO)を発生し自然発火する。
・窒素含有量が増加するほど爆発性が増す。
・エタノールまたは水で湿らせ容器を密栓して貯蔵する。
ニトロ化合物ピクリン酸黄色の結晶・水・アルコール・アセトン・ジエチルエーテルなどの有機溶剤に溶ける。
・金属と反応して爆発性の金属塩を生成する。
・火薬の原料に用いられる。
・金属との接触を避ける。
・乾燥状態では危険性が増すため、水で湿らせて貯蔵する。
トリニトロトルエン淡黄色の結晶・酸化されやすい物質と混合すると衝撃などで爆発の危険性がある。・火気、打撃、衝撃、摩擦をさける。
ニトロソ化合物ジニトロソペンタメチレンテトラミン淡黄色の粉末・水、ベンゼン、アルコール、アセトンにわずかに溶ける。
・加熱により約200℃で分解してホルムアルデヒド、アンモニア、窒素を生成する。
・酸や有機物と混合すると、発火の危険性がある。
・酸や有機物との接触をさける
アゾ化合物アゾビスイソブチロニトリル白色の結晶性粉末・水に溶けにくいが、アルコール・ジエチルエーテルには溶ける。
・融点以上に加熱すると窒素、シアンガスを生成して分解する。
・毒性があり目や皮膚を侵す
・可燃物、有機物との接触をさける。
ジアゾ化合物ジアゾジニトロフェノール黄色の不定形粉末・水にほとんど溶けないが、アセトンなどの有機溶剤には溶ける。
・固体は不安定で加熱などにより簡単に爆発する。
・光によって褐色に変色する。
・水、または水とアルコールの混合液の中で保存する。
ヒドラジンの誘導体硫酸ヒドラジン白色の結晶・還元性が強く酸化剤と激しく反応する。
・アルカリと反応して有毒なヒドラジンを遊離する。
・融点以上に加熱すると分解して、アンモニア、二酸化硫黄、硫化水素、硫黄を生成する。
・酸化剤、アルカリ、可燃物との接触を避ける。
・容器は密栓して換気のよい冷暗所に貯蔵する。
ヒドロキシルアミンヒドロキシルアミン白色の結晶・水酸化ナトリウムのような強アルカリには酸として反応して塩を生成する。
・室温で、湿気、二酸化炭素によりで急速に分解して窒素酸化物を生成する。
・水、アルコールによく溶ける。
・水溶液は鉄イオンなどの金属イオンが混入すると、分解触媒となり爆発の危険性がある。
・金属イオンを混入させない。
・冷暗所に貯蔵する。
ヒドロキシル塩類硫酸ヒドロキシルアミン白色の結晶・水によく溶けるが、エーテル・アルコールにはほとんど溶けない。
・アルカリ性の物質と激しく反応する。
・粉塵爆発の危険性がある。
・強い還元剤で、酸化剤や金属粉末などと激しく反応する。
・加熱や燃焼により有毒な二酸化窒素と二酸化硫黄を発生する。
・粉塵爆発の危険性があるため、粉塵の吸入を避ける。
・乾燥した場所に貯蔵する。
塩酸ヒドロキシルアミン白色の結晶・115℃以上に加熱すると、爆発の危険性がある。
・その他は硫酸ヒドロキシルアミンと同じ。
・硫酸ヒドロキシルアミンと同じ貯蔵・取扱い。
〇その他のもので政令で定めるもの金属のアジ化物:アジ化ナトリウム無色の板状結晶・アジ化ナトリウム自体に爆発性はないが、酸と反応して有毒で爆発性のアジ化水素を発生する。
・加熱すると300℃で窒素とナトリウムに分解する。
・水と重金属に反応して爆発性のアジ化物を生成する。
・皮膚に触れると炎症を起こす。
・酸、重金属と一緒に貯蔵しない。
硝酸グアニジン:硝酸グアニジン白色の結晶・水、アルコールによく溶ける。
・可燃物や有機物、還元性物質と接触すると発火する。
・可燃物、有機物、還元性物質との接触を避ける。

5-3-1. 第5類に属する危険物の特性

 

有機過酸化物

 有機過酸化物とは、一般に過酸化水素の水素原子(H)が炭素原子で置き換えられた化合物で、分子内にある-O-O-結合があることが特徴的です。有機過酸化物の分子内にある-O-O-結合は結合力が弱く、非常に不安定で点火によって激しく燃焼し一定の条件下で爆発的に分解します。有機過酸化物に属する主な危険物には、過酸化ベンゾイル・エチルメチルケトンパーオキサイド・過酢酸があります。
有機過酸化物の性状・特徴
・-O-O-結合を有するため不安定であり低い温度で分解して発火する
・強力な酸化作用がある
・高濃度のものは、爆発の危険性が高い
・強酸や酸化されやすい物質と接触すると、燃焼、爆発の危険性がある
・熱に対して不安定で、直射日光などにより分解して爆発する
・乾燥状態で取り扱わない

硝酸エステル類

 硝酸エステル類とは、硝酸の水素原子がアルキル基で置き換えられた化合物であり、硝酸エステル類は硝酸とアルコールからできるエステルです。硝酸エステル類は、空気中で自然分解して窒素酸化物(一酸化窒素や二酸化窒素)を発生します。硝酸エステル類に属する主な危険物には、硝酸メチル、硝酸エチル、ニトログリセリン、ニトロセルロースがあります。
硝酸エステル類の性状・特徴
・硝酸とアルコールからできるエステル類を硝酸エステル類とよぶ
・空気中で自然分解して窒素酸化物(一酸化窒素や二酸化窒素)を発生する
・有機溶剤に溶け、引火性を有するものがある
・ニトロセルロースは空気中に長時間放置すると自然発火の危険性がある

ニトロ化合物

 ニトロ化合物とは、有機化合物の水素原子がニトロ基で置き換えられた化合物であり、一般に不安定な物質が多く爆発の危険性があり火薬の原料等に用いられる物質です。ニトロ化合物の特徴として分子内に3個のニトロ基を有しており、ニトロ化合物に属する主な危険物には、ピクリン酸、トリニトロトルエンがあります。
硝酸エステル類の性状・特徴
・分子中に3個のニトロ基を有し、火薬の原料に用いられる
・発火点は100℃より高い
・ジエチルエーテルに溶ける
・ピクリン酸は金属と反応して爆発性の金属塩を生成する

ニトロソ化合物

 ニトロソ化合物とは、ニトロソ基を有する化合物でニトロ基より酸素が一つ少ないニトロソ基を持つ化合物は一般に不安定なものが多く、酸と混合したり加熱や衝撃によって爆発の恐れがあります。
 ニトロソ化合物に属する主な危険物にはジニトロソペンタメチレンテトラミンがあります。ジニトロソペンタメチレンテトラミンは、淡黄色の粉末で、水・ベンゼン・アルコール・アセトンにわずかに溶け、加熱すると分解してホルムアルデヒド・アンモニア・窒素を生成します。

アゾ化合物

 アゾ化合物とは分子中にアゾ基を有する化合物であり、常温でも徐々に分解することがあり加熱などによって急激に分解し窒素を生成します。アゾ化合物のうちアゾ基の片方にアルキル基をもつアゾ化合物は液体ですが、アゾ基の両方にベンゼン環などを含むアゾベンゼンなどの芳香族アゾ化合物はすべて固体であり芳香族のアゾ化合物は安定した固体の物質で、色素として合成染料として使用されています。一般にアゾ化合物は水に溶けにくい物質です。
 アゾ化合物に属する主な危険物にはアゾビスイソブチロニトリルがあります。アゾビスイソブチロニトリルは、白色の結晶性粉末で融点以上に加熱すると、窒素とシアンガスを発生して分解します。

ジアゾ化合物

 ジアゾ化合物とは、ジアゾ基を有する化合物の総称で多くは爆発性を有し特に危険なのは固体であり、不安定な物質で加熱などにより簡単に爆発します。ジアゾ化合物に属する主な危険物には、ジアゾジニトロフェノールがあります。ジアゾジニトロフェノールは黄色の不定形粉末で、光によって褐色に変色することが特徴です。水にほとんど溶けない為、貯蔵は水または水とアルコール混合液の中で保存されます。

ヒドラジンの誘導体

 ヒドラジンはアンモニアの水素原子の一つがアミノ基で置き換えられた化合物であり、ヒドラジンの誘導体に属する主な危険物として硫酸ヒドラジンがあります。硫酸ヒドラジンは弱アルカリ性のヒドラジンと強酸の硫酸の中和反応で生成する塩です。白色の結晶で、冷水には溶けませんが温水には溶けて賛成を示します。アルカリと反応して有毒なヒドラジンが発生します。燃焼時には窒素酸化物などの有毒なガスが発生します。

ヒドロキシルアミン

 ヒドロキシルアミンは、アンモニアの水素原子の一つが水酸基で置き換えられた化合物です。ヒドロキシルアミン水溶液は鉄イオンなどの金属イオンが混入すると、分解触媒となり爆発の危険性があります。水酸化ナトリウムなどの強アルカリには酸として反応して塩を生成します。

ヒドロキシルアミン塩類

 ヒドロキシルアミン塩類はヒドロキシルアミンと酸との中和反応による塩の化合物の総称であり、ヒドロキシルアミンと同じ危険性があります。ヒドロキシルアミン塩類に属する主な危険物には、硫酸ヒドロキシルアミンと塩酸ヒドロキシルアミンがあります。ヒドロキシルアミン塩類の共通の性状として、水溶液は酸性を示し、金属を腐食します。形状は白色の結晶で粉状のものは粉塵爆発の危険性があり、粉塵での吸入は避けて扱います。

金属のアジ化物
(アジ化ナトリウム)

金属のアジ化物とはアジ化水素の水素原子が他の金属で置き換えられた化合物の総称で、金属のアジ化物は3つの窒素原子が結合している為、非常に不安定でわずかな衝撃で爆発することがあります。金属のアジ化物に属する主な危険物には、アジ化ナトリウムがあります。アジ化ナトリウムは加熱すると窒素とナトリウムに分解し、酸と反応して有毒なアジ化水素を生成します。

硝酸グアニジン

 硝酸グアニジン、グアニジンの硝酸塩で、爆薬の成分として多く利用されており、可燃物や有機物、還元性物質と接触すると発火します。白色の結晶で水やアルコールに溶け、急激な加熱や衝撃によって爆発の危険性のある物質です。

5-3-2. 第5類に属する危険物の性質一覧

 ここでは第5類に属する危険物の性質を簡単な一覧表にしてまとめました。第5類の危険物の比重は1より大きく、引火性、自然発火性のある性質を持つ危険物がありその特徴ごとに分けて覚えていくと覚えやすいのかもしれません。
品名危険物比重融点(℃)引火点(℃)発火点(℃)沸点(℃)その他の性質
有機過酸化物過酸化ベンゾイル1.3103℃〜105℃ - 125℃ - ・強い酸化作用がある
・無臭
エチルメチルケトンパーオキサイド1.12-20℃72℃176℃ - ・強い酸化作用がある
・特異臭
過酢酸1.20.1℃41℃200℃105℃・強い酸化作用がある
・強烈な刺激臭
硝酸エステル類硝酸メチル1.22-82℃15℃ - 66℃・甘味と芳香がある
硝酸エチル1.1113℃10℃ - 87℃・甘味と芳香がある
ニトログリセリン1.6013℃ -  - 160℃・甘味がある
・有毒
ニトロセルロース1.7 -  - 160℃〜170℃ - ・無味無臭
ニトロ化合物ピクリン酸1.8122℃〜123℃150℃300℃〜320℃255℃・毒性がある
・水溶液は強酸性
・火薬の原料に用いられる
トリニトロトルエン1.680℃ - 230℃ - ・日光にあたると茶褐色に変わる
・TNT火薬に用いられる
ニトロソ化合物ジニトロソペンタメチレンテトラミン1.45255℃ - - - ・約200℃で分解してホルムアルデヒド、アンモニア、窒素を生成
アゾ化合物アゾビスイソブチロニトリル1.1105℃ - - -
ジアゾ化合物ジアゾジニトロフェノール1.63169℃ - 180℃ - ・光によって褐色に変色
ヒドラジンの誘導体硫酸ヒドラジン1.37254℃ - - - ・光によって褐色に変色
ヒドロキシルアミンヒドロキシルアミン1.2033℃100℃130℃58℃・還元性が強い
ヒドロキシルアミン塩類硫酸ヒドロキシルアミン1.9170℃ - - - ・強い還元剤
塩酸ヒドロキシルアミン1.67152℃ - - - ・金属を腐食する
金属のアジ化物アジ化ナトリウム1.8300℃ - - - ・約300℃で窒素とナトリウムに分解
硝酸グアニジン硝酸グアニジン1.44約215℃ - - - ・強酸化剤

6-1-1. 第6類の危険物に共通する特性と貯蔵・取扱い・消化方法

 第6類の危険物とは、消防法別表第一の第6類の品名欄に掲げてある、酸化性の液体の性状を有する物質を指し、酸化性の液体とは液体であって酸化力の潜在的な危険性を判断するための燃焼試験において一定の性状を示すものを呼びます。第6類の品名は過塩素酸・過酸化水素・硝酸・その他のもので政令でさだめるもののの大きく分けて4品目、主な危険物として、「過塩素酸」「過酸化水素」「硝酸」「発煙硝酸」「三フッ化臭素」「五フッ化臭素」「五フッ化ヨウ素」があります。第六類の危険物の主な性状としてそれ自体は燃えない不燃性の液体であること強い酸化性を有しており強酸化剤として他の物質を酸化し又可燃物・有機物・酸化されやすい還元性物質と混合すると発火や爆発の危険性があること腐食性があり蒸気は有毒であることです。  第6類の危険物に共通する貯蔵・取扱のポイントとしては金属・還元性との接触は厳禁であり、過酸化水素以外の第6類の危険物は密栓して風通しの良い冷暗所に貯蔵することです。  第6類の危険物に共通する消化方法としては一般には大量の水、水系消火剤で冷却消化しますが、すべての第6類に有効な消化方法は乾燥砂等で覆うことです。第6類の危険物は燃焼時に分解して酸素を放出する物質が多く第5類と同様に窒息作用によって酸素を遮断する二酸化炭素消火剤、ハロゲン化物消火剤には効果がなく適応しません。

6-2-1. 第6類の危険物の品名・物質・性状・貯蔵/取扱い

 ここでは第6類の危険物の品名・危険物物質・化学式・性状・貯蔵方法を一覧にしました。試験で覚える必要があるのはこの7アイテムになると思いますのでしっかりと特徴と貯蔵・取扱いを覚えておきましょう。
危険物の品名危険物の物質化学式形状危険物の性状・危険性貯蔵・取扱
過塩素酸過塩素酸無色の発煙性液体・空気中で発煙する
・水溶液は強酸性
・密閉した容器にいれて貯蔵しても次第に黄変し、分解生成物が触媒となり分解をし続ける
・水を加えると音を発して発熱する
・水溶液は強酸性の為、金属・非金属を酸化し、腐食する
・蒸気は強い腐食性がある。
・可燃物や有機物、還元性物質、金属との接触を避ける。
・容器は密栓して通風のよい乾燥した冷暗所に貯蔵する。
過酸化水素過酸化水素無色の粘性のある液体・分解すると発熱する
・不安定な物質で一定濃度以上になると分解して水と酸素を発生させる、熱や光にあてると水と酸素に分解する
・アルカリ性のアンモニアと接触すると爆発する
・分解を抑制するため安定剤としてリン酸・尿酸・アセトアニリドが使用される
・過酸化水素の3%の水溶液に安定剤を加えたものは、医療用の消毒剤として利用されオキシドール・オキシフルと呼ばれる
・分解して酸素を発生するため、容器は密栓せず、穴の開いた栓をして通気性を保つ。
硝酸硝酸無色の液体・銅・銀・水銀などの金属と反応して水素・窒素酸化物を生成する。
・日光や加熱によって有毒な二酸化窒素を生じ黄褐色になる
・アンモニアと接触すると硝酸アンモニウムを生成し爆発する危険性がある
・鉄、ニッケル、クロム、アルミニウムは希硝酸には溶けるが濃硝酸にはとけない
・容器は密栓して湿気の少ない換気のよい冷暗所に貯蔵する。
・濃硝酸はステンレス鋼・アルミニウム製などの容器に貯蔵する。
・流出した場合はソーダ灰などで中和する。
発煙硝酸 - 赤色・赤褐色の発煙性液体 ・硝酸より酸化力が強い
・空気中で有毒な褐色の二酸化窒素の蒸気を発生させる
・その他は硝酸とほぼ同じ
・硝酸と同じ
ハロゲン間化合物三フッ化臭素(BrF3) - 無色の発煙性液体・空気中で発煙する
・水と反応して有毒なフッ化水素を生成する
・フッ素原子(F)を多く含むほど反応性が強く、危険性が高くなる
・金属・非金属を酸化してハロゲン化物を生成する
・水溶液は腐食性が強くガラスをおかすため、ガラス製の容器は使用しない。
・消化には水系消火剤は使用せず乾燥砂等・リン酸塩類等の粉末消火剤を用いる。
・二酸化炭素/ハロゲン化物の消火剤には効果がない
五フッ化臭素(BrF5) - 無色の発煙性液体・沸点が41℃で気化しやすい
・水と反応して有毒なフッ化水素を生成する
・三フッ化臭素よりフッ素原子(F)を多く含むため多くの元素や化合物と反応する
・金属・非金属を酸化してハロゲン化物を生成する
・三フッ化臭素と同じ
五フッ化ヨウ素(F5) - 無色の発煙性液体・水と反応して有毒なフッ化水素およびヨウ素酸を生成する
・酸または酸性蒸気に触れると猛毒のフッ化水素を生成する。
・三フッ化臭素よりフッ素原子(F)を多く含むため多くの元素や化合物と反応する
・金属・非金属を酸化してハロゲン化物を生成する
・三フッ化臭素/五フッ化臭素と同じ

6-3-1. 第6類に属する危険物の特性

過塩素酸

 過塩素酸は塩素にヒドロキシ基とオキシ基3基の構造を持つ物質で、きわめて不安定で強力な酸化性を有するため、一般には水溶液で用いられ、分析化学の試薬、金属の溶解、有機合成の触媒などに使用されています。水溶液はその強酸性により多くの金属や非金属を腐食し還元性の鉄や銅と激しく反応して金属酸化物を生成します。不安定なため、密栓して冷暗所に保存しても次第に分解して黄変し、その分解生成物が触媒となって分解し続けます。  水を加えると音を発して発熱し、空気中では発煙、加熱すると酸素と有毒な塩化水素を発生して爆発する危険性のあることが特徴です。

過酸化水素

 過酸化水素は化学式H2O2の化学式の化合物で酸化性が強いため、一般に水溶液で用いられ、漂白剤・殺菌剤・酸化剤・医薬品などで利用されています。過酸化水素の3%水溶液に安定剤を加えたものは、医療用の消毒剤として利用され、オキシドールまたはオキシフルと呼ばれており活用されています。  過酸化水素は純粋なものは無色の液体で、強い酸化性を有しますがより酸化性の強い物質に対しては還元剤として働くことがあります。水とは任意の割合で混合し、水溶液は弱酸性でエタノールやジエチルエーテルには溶けますがベンゼンなどには溶けません。きわめて不安定な物質であり、常温(20℃)でも分解して水と酸素を発生しかつ熱や光によっても水と酸素に分解する為、その分解を抑制する為に安定剤としてリン酸・尿酸・アセトアニリドなどが用いられています。  貯蔵方法は第6類では過酸化水素のみ容器は密栓せずに、穴の開いた栓を使用して通風のよい乾燥した冷暗所に貯蔵します。

硝 酸

 硝酸は、HNO3の化学式をもつ化合物で一般にはアンモニア(NH3)を酸化して一酸化窒素をつくりさらに酸化して生じた二酸化窒素に水を吸収させて作られており、火薬や医薬品、染料などの製造に利用されています。一般には、純硝酸の水溶液のことを「硝酸」と呼び、濃度が高いもの(60〜70%)を「濃硝酸」、濃度が低いもの(おおよそ30%)を「希硝酸」とよんでいます。  硝酸は、それ自体に爆発性・燃焼性はありませんが、強い酸化性を持つため、銅、水銀、銀などの金属と反応して水素や窒素酸化物を生成し、日光や加熱によって分解して酸素と有毒な二酸化窒素を生じ黄褐色に変化します。濃アンモニアと接触すると、硝酸アンモニウムを生成し、爆発のおそれがあります。  特徴的なことは鉄、ニッケル、クロム、アルミニウムの金属は希硝酸には溶けますが、濃硝酸には溶けない為濃硝酸はステンレス鋼(鉄とクロムの合金)、アルミニウム製などの容器に保存することができます。  硝酸の危険物には硝酸と発煙硝酸があり、硝酸と発煙硝酸の違いは硝酸より発煙硝酸のほうが酸化力が強いこと、硝酸が無色の液体であることに対し発煙硝酸は赤褐色の液体です。硝酸は日光や加熱によって二酸化窒素を生じ黄褐色に変化することに対し、発煙硝酸は褐色の二酸化窒素を発生させます。

※化学記号はChemSketchを使用して描いています。参考までに…。
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